
住宅ローンを借り入れる際、返済方法の選択は家計全体に大きく影響を与えます。返済方法には大きく分けて「元利均等返済」と「元金均等返済」という2つの方式があり、それぞれに異なる特徴があります。
このうち元金均等返済とは、毎月返済する元金の額を一定に保ちながら、利息を上乗せして支払う方式を指します。返済が進むにつれて利息負担が減っていくため、月々の返済額は徐々に少なくなっていくのが特徴です。
元金均等返済の基本的な仕組み
元金均等返済では、借入総額を返済回数で均等に割った金額が、毎月返済する元金部分となります。これに加えて、その時点での借入残高に応じた利息を支払うという構造です。
返済額の変化の仕組み
返済を開始した当初は借入残高が大きいため、利息の負担も大きくなります。しかし元金は毎月一定額ずつ確実に減っていくので、時間が経つほど利息部分が小さくなり、結果として毎月の返済額全体も減少していきます。
この点が、返済期間を通じて返済額が変わらない元利均等返済との大きな違いです。
元利均等返済との違いを比較
元利均等返済と元金均等返済の特徴を整理すると、以下のような違いがあります。
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 返済期間中ずっと一定 | 返済開始時が最も多く、徐々に減少 |
| 元金の減り方 | 初期は遅く、後期に加速 | 最初から一定のペースで減少 |
| 総返済額 | 元金均等返済より多くなる | 元利均等返済より少なくなる |
| 返済計画の立てやすさ | 返済額が一定で計画しやすい | 返済額が変動するため注意が必要 |
2つの返済方式には、それぞれメリットとデメリットがあるため、どちらが優れているとは一概に言えません。自分の収入や家計の状況、将来的なライフプランを踏まえて選ぶことが大切です。
元金均等返済のメリット
元金均等返済を選ぶことで得られる利点をいくつか見ていきましょう。
総返済額を抑えられる
元金が早いペースで減っていくため、利息の計算基準となる借入残高も速やかに減少します。その結果、返済期間全体で支払う利息の総額が元利均等返済に比べて少なくなり、総返済額を抑えることができます。
返済後半の負担が軽くなる
返済を続けるうちに月々の返済額が減っていくため、将来的に収入が減る可能性がある場合や、定年退職後も返済が続く場合に有利です。
子どもの教育費が増える時期を見越して、その頃に住宅ローンの負担を軽くしたいという考え方にも適しています。
借入残高の減少が早い
元金を毎月一定額ずつ返済していくため、借入残高の減り方が元利均等返済より速くなります。万が一、返済途中で住宅を売却する必要が生じた場合でも、残債が少なければ売却がスムーズに進みやすくなるでしょう。
これらのメリットは、返済初期に高い返済能力がある方や、長期的な視点で利息負担を減らしたい方にとって魅力的なポイントです。
元金均等返済のデメリットと注意点

一方で、元金均等返済には注意すべき点もあります。
返済開始当初の負担が大きい
元金均等返済では、返済初期の月々の返済額が元利均等返済に比べて高くなります。返済開始当初の負担が大きいため、一定の年収がないと審査に通らない可能性もあり、借入可能額が制限されるケースもあります。
返済計画が立てにくい
毎月の返済額が変動していくため、家計管理に不慣れな方にとっては計画を立てにくいと感じることがあります。返済額が一定である元利均等返済に比べると、将来の収支予測にやや手間がかかるかもしれません。
金利変動時の影響
変動金利型のローンを選んだ場合、金利が上昇すると利息部分が増えるため、月々の返済額が即座に増加します。元利均等返済では多くの金融機関が「5年ルール」や「125%ルール」を適用していますが、元金均等返済ではこれらのルールが適用されないのが一般的です。
このため、金利上昇時には家計への影響が大きくなる可能性があります。
これらの注意点を踏まえると、返済初期の収入が十分にあり、将来的な金利変動リスクにも対応できる余裕がある方に向いていると言えます。
どのような人に適しているのか
元金均等返済は、誰にでも適した返済方法というわけではありません。自分の状況に合っているかを見極める必要があります。
元金均等返済が向いている人の特徴
- 返済開始時の収入に余裕があり、初期の高い返済額にも対応できる方
- 総返済額をできる限り抑えたいと考えている方
- 将来的に収入が減る見込みがあり、返済後半の負担を軽くしたい方
- 借入残高を早く減らしたいと考えている方
慎重に検討すべきケース
逆に、返済開始当初から大きな支出が見込まれる場合や、子どもの教育費のピークが5年後や10年後に控えている場合には、元金均等返済は適さないかもしれません。返済初期の負担が大きいため、貯蓄を増やす余裕が持ちにくくなるからです。
また、金融機関によっては元金均等返済を取り扱っていない場合もあるため、希望する場合は事前に確認しておくことが大切です。
返済方法の選択は、目先の損得だけでなく、家計の安定性や将来のライフイベントを総合的に考えて判断することが望ましいでしょう。